社団法人
コンピュータエンターテインメント協会
会長 和田 洋一

本日は大変お忙しい中、ご参集いただきまして誠にありがとうございます。今年の「東京ゲームショウ」では、『GAME は、元気です。』という、とてもストレートなテーマを掲げました。余りにも不景気なので、空元気でこうしたテーマにしたのではと仰られる方もいましたが、実際に会場で出展各社様のブースをご覧いただくと、全くそうではないということがご確認に頂けたのではないかと思います。新しいゲーム機が登場しておよそ 4年が経ち、私共ソフトメーカーも、各ゲーム機での開発に随分慣れてきたことに加え、お客様がそれぞれのゲーム機でどの様な楽しみ方をされているのかということも、はっきりと見えてきました。その結果、お客様の潜在的なニーズを、より的確に汲み取ったゲームを作れるようになっています。本日、発表させていただいた「日本ゲーム大賞」に非常に練度の高い自信作が集まったのも、こうしたゲーム産業の状態が反映された結果だと考えております。
 
それでは、今後についてはどうかと申しますと、市場、開発、イノベーションのそれぞれの面において、まだ道半ばではございますが、方向感が見えてきたのではないかと感じております。
 
まず市場、これはお客様層を広げるということですが、グローバル化というテーマについては、「東京ゲームショウ」をはじめ、業界全体として取り組んでおりますし、各社とも非常に意識してモノを作るようになっております。今のペースで進むことができれば、グローバル化を実現できる水準まで来ているのではないかと思っております。また、市場と申しますと、もっぱらグローバル化ということが言われてきましたが、もう一つ、我々の中で意識しておかなければならないのは「大人」の市場です。ゲームと申しますと、子供向けであるという意識が強く、我々も産業の勃興以来、いかに子供向けに良質なゲームを作るかという点に腐心してまいりました。勿論、今後もここは変わりませんが、現在は、主に子供をターゲットとして作ったゲームを、大人の方々にも遊んで頂いているという状況です。こうした現状を考えると、例えば、大人の方々が十分に楽しめるエンターテイメントとしてのゲームを提供できれば、それだけで市場が広がります。この方向というのは、我々が今後取り組んでいかなければならないポイントだと思っております。
 
また、開発面においては、十数年前に比べてクリエーター同士の交流が少なくなってきたということから、開発の土壌が痩せてきたなどという話を2年頃前から申し上げてまいりました。そこで、CESAとして、このような状況を打開することを目的に、いかに海外のゲーム開発事情を国内に紹介するか、国内のクリエーター同士の交流を促進するかという意識で活動してまいりました。当年度に関しては、その目玉として「CEDEC 2009」をパシフィコ横浜において開催し、大盛況、大成功の内に終了しております。実際に行われたセッションも非常に濃い内容になっており、クリエーターの参加者数もかなり増えています。ようやく始まったばかりではございますが、現在の方向で進み続ければ、非常に良い土壌が蘇って来ると実感しております。
 
最後にイノベーションについては、6月に開催されたE3以降、コントローラーをはじめとする、ハード側での様々なイノベーションが発表されており、さらに、ネットワーク上で提供されるエンターテイメント体験を充実させるという点でも、開発が進められています。ソフトメーカー側でも、こうしたハードメーカー各社の動きに呼応して、多様なゲームの開発に取り組んでいます。しかし実は、この業界において、まだ大きく発展する余地のある分野があります。それは収益モデルです。向こう5年~10年は、収益モデルにおけるイノベーションが原動力になり、さらに市場を押し上げていくものと考えております。収益モデルは、コンテンツを流通させる「メディア」によって大きく変えることが可能となります。新たな収益モデルを業界の中に定着させ、発展させていくことで、我々ゲーム産業は成長の第2ステージという大きな山を登ることが出来るのだと考えております。
 
このように考えていきますと、ゲーム産業は足元で元気であるだけではなく、将来にわたっても光が見えて来た状況だと考えております。政権も交代し、さまざまな変化が生まれて来る時期です。世界経済に関してはまだ先が見えない状況ではありますが、『GAMEは、元気です。』という今年のテーマを念頭に、ゲームこそが日本を元気にするリーダーとなろうという気概で活動してまいりたいと存じますので、今後とも変わらぬご支援のほど宜しくお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。