発表授賞式


 
  選考委員会委員長 養老 孟司

私はこの業界に全く関係がない、完全なユーザーでございます。何のゲームをやっているかは公平性を欠くので、あまり申し上げません。でも、今日も授賞式に伺っていて大変印象が深かったです。これだけ作るほうが一生懸命作っている、そしてユーザーのほうがそれに直接反応している業界というのが日本にどれくらいあるかなと、そんなことを思っていました。

大賞になったWii Sportsですけど、私、確か数年前に岩田社長と話をしていて、「こういうことをやっているんだ」というのを聞いて、これはうまくいったら、いろいろなことに使えるのではないかと思っておりました。今でも思っておりまして、例えば医療関係でしたら、リハビリ用の器械に十分使えるのではないかといったことを、ちょっと思っています。

そういうのは別にどうでもいいって言えば、どうでもいいんですけれど、こういう世界がいろいろなところに、気がつかないで影響を与えているのではないかと思うことを、自分の例で申し上げます。例えば「ムシキング」が流行ったあとには、去年ですか、ロンドン大学を出て、今ニューヨークの大学で教授をしている方が日本にやって来て、「日本人はなぜ虫が好きか」という調査をやっていきまして、私のところに来て聞いていった。そうしたら、今年の夏になったらアメリカのテレビ局が同じ話題で「日本人はなぜ虫が好きか」というのを聞きに参りまして、1時間も私はインタビューをさせられました。そういうことは、おそらく関係の方はご存じないでしょうけれども、いろいろなところに別な波紋が多分起こっていると思います。

先ほどもちらっと逆風も吹くと言っておられましたけれど、発展していく部門というのは、社会の中では常にそういうものをもっているわけで、それは全体のバランスを見ながら直していけばいいことです。私、よく最近「中毒」ということも言われるんですが、実は私は中毒症でございまして、いろいろなことに中毒しているんです。先ほど「マリオ」の話が出ましたけれど、マリオを最初にやった時は、私は大学の教師をやっておりましたけれど、最初に徹夜でやってしまいまして、女房に怒られて大げんかして飛び出して、実家に戻って相変わらずやっておりました。

私が若い頃は、本なんか読むなと、何度も言われております。ゲームもおそらく同じようなもので、ただし、もうちょっと若いので、発展段階にある部門だなと思っております。ですから、将来性が非常に大きいというのは、やっているほうがこれだけ一生懸命にやっている、使うほうも本気でやっているという、こういう業界がほかにどれだけあるだろうかと思うと、まだまだ将来は大きいなというふうに思っております。

どうも皆様、最後までおつき合いいただきまして、ありがとうございました。