選考委員会委員長 養老 孟司

日本ゲーム大賞どうやら無事に終わったようですね。受賞者の方にはおめでとうと申しあげます。
 
私、毎年こちらに伺わせていただいております。既に皆様、お気づきだとは思いますけども受賞されている多くの作品に番号がついておりまして、何年間か続けて作られている作品です。これを見方によっては創造性が無くなったとお考えになるかもしれませんけど、私はむしろそう思っておりません。ゲームにもどうやら古典が出来てきたなと、クラシックですね。そして本質をついてるもの、つまり多くのユーザーの人に受けると言いますか、好まれるものが生き残ってくると思っております。
 
その中で新しいものが出来てきてないかというとご存知の通り、出て来てきております。先程、受賞の挨拶をお聞きしていて思ったんですが、皆さんの健康のためにというのがありまして、数年前からゲーム脳とかあるいはゲーム中毒というようなことが、医学界から言われておりましたけど、そのゲーム業界の方から皆さんの健康の為にと言われるようになる、そういう時代に変わってきたなという風に思っておりました。これは非常に大きな時代の変化で基本的には当たり前ですけどゲームというものが社会的認知度を高めて、もう、そういったことをわざわざ言う必要のない時代になってきたかなと思います。
 
これから先は、むしろこのゲームというものをもう少し大きな立場からどう見るか?作る側もユーザーも含め、もう少し広い意味で人生の中での位置づけを大げさに言ったら考えていいんじゃないか、そういう時代になったなとしみじみ思っておりました。私は、相当古いですから何しろ最初に始めたゲームがご存知インベーダーから平安京エイリアンで、おそらく今のクリエイターの方は聞いたことも無いっていう年齢の方が既におられるんじゃないかと思います。
 
それからもう一つ、あまり長い話はしませんので申し上げますと、受賞の方を拝見していて一つ気が付いたのは、なぜか女性が一人もおられないことです。ユーザーには当然女性の方がおられるわけですから、これは日本の会社のシステムに何かあるのか、あるいはこういったゲームのような特にコンピュータのようなものを使う、つまり電機業界とかですね機械工学界とかなんかも典型的にそうなんですけれども、私、そういうところで講演することがありますが、聞いておられる方が全員男性ということがあります。これはエンターテインメントの業界としては、全てが男性の人で動かされているというのは多少やはりおかしいのではないかと、当然ですが実際の現場では女性の方も働いておられるはずで、あるいはこういうところに出てくる方が大体、男性になってしまうっていうのが日本社会の常識なのかもしれません。ですが、もう少し女性が出てくるような方向にシフトされた方が、案外ユーザーが増えるのかしらと思っておりました。
 
簡単でございますけども本年度の総評させていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。